2016/03/22
加重移動平均・指数移動平均と区別するため、前回・前々回の記事で述べたような移動平均を「単純移動平均」と呼ぶことがある。
ドル/円日足(上図)の赤い線、「単純移動平均1」とあるのが本来の移動平均線で、12月24日終値から計算された平均値は、12月8日の位置にプロットしてある。そう、移動平均は役に立つのか #2 の25日移動平均線と同じものである。
紫色の線、「単純移動平均2」とあるのが多くのトレーダーにもお馴染みの、ただし本来的ではない移動平均線である。 青い線が加重移動平均、緑色の線が指数移動平均で、赤い線と比較するため、いずれも平均期間は25日にしてある。
加重移動平均・指数移動平均が、例の「遅延」を埋めるためのものならば、要は赤い線、本来の移動平均に近似する何かを作りたかったのだと解釈できる。やや近づいているようにも見えるし、さほど努力が実っていないようにも見える。
それぞれの計算法は省略するが、簡単に解説すれば、直近のデータに重みを与えた平均である。いや、もはや平均でさえない気もする。平均値の位置をずらした時点で科学から遠のき、それこそ「乖離」ていたのに、さらに怪しさを増している。
だが、いかに怪しくとも、実践に役立つなら問題ないではないか。
かつてメリル・リンチ社が、1970~76年にわたる商品市場のデータから、単純・加重・指数のうちの最適な移動平均、最適な平均期間を検証している(ジョン・J・マーフィー『先物市場のテクニカル分析』きんざい参照)。無論、検証に使われたのは、トレーダーにお馴染みの位置へプロットしたものである。結果を見てみよう。
最適期間 | 累積純損益 | トレード回数 | 勝ちトレード数 | 移動平均タイプ | |
ココア | 57日 | $ 99,080 | 619 | 166 | 指数移動平均 |
トウモロコシ | 43日 | 24,646 | 565 | 126 | 単純移動平均 |
砂糖 | 60日 | 270,402 | 492 | 99 | 単純移動平均 |
綿花 | 57日 | 68,685 | 641 | 121 | 単純移動平均 |
銀 | 19日 | 42,920 | 1,393 | 429 | 単純移動平均 |
銅 | 59日 | 165,143 | 432 | 158 | 単純移動平均 |
大豆 | 55日 | 222,195 | 728 | 151 | 単純移動平均 |
大豆粕 | 41日 | 31,385 | 1,128 | 235 | 加重移動平均 |
小麦 | 41日 | 65,806 | 480 | 124 | 単純移動平均 |
ポークベリー | 19日 | 97,925 | 774 | 281 | 単純移動平均 |
大豆油 | 34日 | 106,996 | 1,198 | 303 | 加重移動平均 |
合板 | 68日 | 1,622 | 372 | 98 | 単純移動平均 |
豚肉 | 16日 | 35,595 | 1,093 | 318 | 単純移動平均 |
加重移動平均・指数移動平均の考案者の努力、実らなかったようである。
Search
Popular Posts
-
以下では2013年にさかのぼり、フーリエ変換に一目均衡表、ギャン・アングルを用いながらドル/円の分析をおこなう。いわば、 フーリエ変換による分析の概要 の応用編である。現在のドル/円の分析については、 メールマガジン をご参照いただきたい。 一目均衡表を少しでも聞きかじっ...
-
伝説のトレーダーW. D. ギャンの分析手法の中でも、もっともよく知られているのはギャン・アングルであろう。 チャート上に45度の角度、つまりアングルで引かれたライン。価格と時間とが1対1で均衡したものとして、これを最重要の角度とギャンは考えた。この45度ラインをギャン・ライ
-
以下にご案内するのは、いまさら記事にするのも気が引ける定番である。ただ最近、ギャン理論などについてネットで調べてみて、自分にとっての常識が常識として通用していないような気もしてきた。もはや定番も定番ではないかもしれない。無論、読んだことのない初心者の方もいらっ
-
SFにはSFファンがいて、ミステリーにはミステリーファンがいる。そういった意味では、私は経済小説ファンではない。 しかし、ブログのテーマに合わせて、私が読んで面白かった作品の中から経済小説と呼べるもの10作を選んでみた。 どちらかといえば、出版年の古いものが多い。どう
-
一目均衡表を日足で使うにしても、最近では次のような主張がある。 均衡表の考案された昭和初期には、週6日の相場取引があった。つまり基本数値9は1.5週を、26は1ヶ月を表すのであり、完全週休2日となっている現在では、基本数値を7と21に修正しなければならない、云々。実際、海外製...