2015/12/26
金の性の悪なり #2 に書いた岡左内は実在の武士である。『常山紀談』などでは岡野左内と表記されており、蒲生氏、上杉氏に仕官したと伝えられている。
蓄財を好んだのは事実のようである。「貧福論」では控えめな表現になっているが、部屋に敷きつめた金銀の上に裸でころげ回ること、月数回に及んだともいう。
いやらしい守銭奴のようにも聞こえるが、調べてみると、それだけの男ではない。『常山紀談』によれば、奉公人が黄金1枚もっていたのを殊勝とし、褒美に10倍の100両を与えている。「貧福論」には褒美の額が10両と書かれているが、左内の時代の天正大判は1枚10両である。おそらくは、100両の大盤振る舞いをしたとするのが正しい。
ある夜、例によって金銀の上に寝そべっていると、近所から喧嘩の物音が聞こえてきた。左内は秘蔵の正宗の刀をつかんで、仲裁へ駆けつける。部屋にまかれた金銀は2晩そのままであったというから、執着があるのかないのか、わからない。
上杉景勝が反徳川の兵を挙げた際、左内は主君景勝に永楽銭1万貫を献上している。また突然の戦さ支度にあわてる同僚たちへは、惜しみなく金銀を貸し与えている。以後、「あさましい」「武士らしくない」といった陰口は、ぴたりと収まったという。
このときの合戦での左内。鹿毛の馬で敵将に駆け寄り、冑の真っ向から鞍の前輪にかけて斬りつけて、返す刀で冑のしころを斬り払い、太刀も斬り折ってしまう。すかさず膝へも斬りつけたから、敵将はたまらず退散する。あとで敵将が伊達政宗であったと知り、左内は討ち損じたことを悔しがった。豪勇のものでもあったのである。
結局、徳川に敗北した上杉景勝は減移封される。牢人となった左内を、伊達政宗が3万石をもって招こうとした。左内はこれを断り、旧主の子、蒲生秀行に1万石で仕えている。蓄財だけが目的の男であれば、迷わず3万石を選んでいたはずである。
秀行の子、忠郷の代に左内は臨終を迎える。遺品として忠郷へは金3千両と正宗の刀、忠郷の弟、中務忠知へは金3千両と景光の刀、貞宗の小脇差を献じている。同僚や家来へも遺産を分配し、借用証書の類いは一切、焼き捨てたという。
蓄財を好んだのは事実のようである。「貧福論」では控えめな表現になっているが、部屋に敷きつめた金銀の上に裸でころげ回ること、月数回に及んだともいう。
いやらしい守銭奴のようにも聞こえるが、調べてみると、それだけの男ではない。『常山紀談』によれば、奉公人が黄金1枚もっていたのを殊勝とし、褒美に10倍の100両を与えている。「貧福論」には褒美の額が10両と書かれているが、左内の時代の天正大判は1枚10両である。おそらくは、100両の大盤振る舞いをしたとするのが正しい。
ある夜、例によって金銀の上に寝そべっていると、近所から喧嘩の物音が聞こえてきた。左内は秘蔵の正宗の刀をつかんで、仲裁へ駆けつける。部屋にまかれた金銀は2晩そのままであったというから、執着があるのかないのか、わからない。
上杉景勝が反徳川の兵を挙げた際、左内は主君景勝に永楽銭1万貫を献上している。また突然の戦さ支度にあわてる同僚たちへは、惜しみなく金銀を貸し与えている。以後、「あさましい」「武士らしくない」といった陰口は、ぴたりと収まったという。
このときの合戦での左内。鹿毛の馬で敵将に駆け寄り、冑の真っ向から鞍の前輪にかけて斬りつけて、返す刀で冑のしころを斬り払い、太刀も斬り折ってしまう。すかさず膝へも斬りつけたから、敵将はたまらず退散する。あとで敵将が伊達政宗であったと知り、左内は討ち損じたことを悔しがった。豪勇のものでもあったのである。
結局、徳川に敗北した上杉景勝は減移封される。牢人となった左内を、伊達政宗が3万石をもって招こうとした。左内はこれを断り、旧主の子、蒲生秀行に1万石で仕えている。蓄財だけが目的の男であれば、迷わず3万石を選んでいたはずである。
秀行の子、忠郷の代に左内は臨終を迎える。遺品として忠郷へは金3千両と正宗の刀、忠郷の弟、中務忠知へは金3千両と景光の刀、貞宗の小脇差を献じている。同僚や家来へも遺産を分配し、借用証書の類いは一切、焼き捨てたという。
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